映画・映像
映画のメティエ 日本篇
映画のメティエ日本篇

筒井武文[著]
四六判/424頁
本体3600円(+税)
ISBN978-4-86405-190-3
C1074
2025.7

映画・映像



2025年3月に刊行された好評の「欧米篇」に続く「日本篇」。溝口、小津などの古典映画から現代映画へと視点を移しながら、個々の映画に注がれる繊細な眼差しが、新たな日本映画史の流れを形づくる。「欧米篇」同様、多彩な映画論が躍動する。

[序]日本映画とは何か



[第T部]古典映画

〈場〉の要請する衣裳力学 ジャック・リヴェットから溝口健二へ
環境の映画、映画の環境 一九三五年の成瀬巳喜男
割れない壺 山中貞雄『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』
映画で歩くこと 清水宏『按摩と女』『簪
』 人力車を彩る光と影の戯れ 石田民三『むかしの歌』
映画に文法はない 小津安二郎の移動撮影
色彩の遊戯による視線の誘導 小津安二郎の後期



[第U部]戦後映画

脆い境界線の魅惑 黒澤明『素晴らしき日曜日』
スタンバーグ最後のヒロインは日本にいる! 『アナタハン』
始源の映画的想像力の覚醒 川島雄三の大映作品
異次元空間で爆発する関係の逆転劇 増村保造『偽大学生』
ローアングルの闘い 加藤泰の撮影術
闇の暗さと懐かしさと 中村錦之助追悼
脱線しない列車映画の悪夢 瀬川昌治論



[第V部]撮影所崩壊期

平面の視線劇 吉田喜重論
時間の罠 大和屋竺論
似ているのか、似ていないのか 鈴木清順浪漫三部作
身体のどんでん返し 神代辰巳論
日活ロマンポルノの環境 中川好久『むちむちネオン街 私たべごろ』
プログラム・ピクチャーから遠く離れて 続・瀬川昌治論
遠近法の攪乱 寺山修司論
意識と無意識のあいだに 松本俊夫追悼



[第W部]世紀末の静かな革命

虚構の空間宣言 黒沢清『地獄の警備員』
『福沢諭吉』は傑作です 山田宏一さんへの手紙
対で存在する 澤井信一郎論
映画の虚構性への問い 相米慎二論
空間の変奏曲 風間志織『冬の河童』
辺境の「鏡の国のアリス」 青山真治『Helpless』
十の恐怖、Xの悲劇 黒沢清『CURE』
「フレーム」の内側と外側 田村正毅論



[第X部]ある映画作家・諏訪敦彦

ゼロからの出発 『2/デュオ』
俳優に絶対の自由を与えること 『M/OTHER』
不可能なリメイク 『H story』
併置された孤独の痛み 『不完全なふたり』
不在のフレーミング 『誰も必要としていないかもしれない、映画の可能性のために──制作・教育・批評』
諏訪敦彦全作品解説



[第Y部]二一世紀の映画作家

二一世紀の映画環境
正面に気をつけろ 井口奈己論
映画という名の実験場 宮崎大祐論
古くて新しい映画が生まれた 三宅唱『ケイコ 目を澄ませて』
映画的奇跡を呼び込む 『孤独な惑星』の綾野剛
わたしは誰なのか 杉田協士論
モノローグと密着 井川耕一郎追悼
テラスハウスの迷宮 小林豊規『静かに燃えて』



[第Z部]映画批評家論

「ぼくのヒッチコック研究」を研究する 植草甚一論
映画への愛と欲望 山田宏一論
映画的思考のすべての可能性 小松弘『起源の映画』
映画の発見への旅 山根貞男『現代映画への旅』&青山真治『われ映画を発見せり』
『リトアニアへの旅の追憶』のように 西嶋憲生『生まれつつある映像──実験映画の作家たち』
映画はなぜ面白いか 粉雪まみれ『デコボコ映画館──ハンディキャップ映画について語ろう』
肯定と否定のあいだで 蓮實重?『映画に目が眩んで』
積極的に未完を引き受ける倫理 中条省平『映画作家論──リヴェットからホークスまで』
「終わり」のない映画の企て 小川紳介『映画を穫る──ドキュメンタリーの至福を求めて』
映画の世紀末への眼差し 『悪魔に委ねよ──大和屋竺映画論集』
「大和屋的なる場」との遭遇 『荒野のダッチワイフ──大和屋竺ダイナマイト傑作選』
創造の不可思議な秘密 ダンヴェール/タトム『ナギサ・オオシマ』
映画を音から見た「オペラ」の書 橋本文雄・上野ミ志『ええ音やないか──橋本文雄・録音技師一代』

 
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[著者]
筒井武文(つつい たけふみ)
1957年生まれ。映画監督、東京藝術大学大学院映像研究科教授
東京造形大学時代から、映画製作を始める。卒業後はフリーで、助監督、映画編集をやりながら、自主製作を続ける。劇場デビューは、1987年公開の『ゆめこの大冒険』。監督作品に、『レディメイド』(1982)、『学習図鑑』(1987)、『アリス イン ワンダーランド』(1988)、『オーバードライヴ』(2004)、『バッハの肖像』(2010)、『孤独な惑星』(2011)、『映像の発見=松本俊夫の時代』5部作(2015)、『自由なファンシィ』(2015)、『ホテルニュームーン』(2020)