日本映画史
映画産業史の転換点
映画産業史の転換点

本体4300円(+税)
谷川建司[編]
A5判/424頁

978-4-86405-149-1
C1074
2020.07

日本映画史


日本映画の凋落と再生
1958年をピークに斜陽産業へと転じた日本映画界は、いかにして時代の変化に対抗・対応していったのか。映画会社の戦略、俳優の組合運動、中村錦之助が製作した幻の映画『祇園祭』(1968)をめぐる騒動など、映画を広く産業としてとらえ、作家・作品中心ではない、日本映画史のオルタナティヴを描き出す。

【目次】

はじめに=谷川建司

[T 映画産業界の経済と経営]
01 監督が映画を撮れなくなったとき──東宝サラリーマン喜劇社長シリーズ¥シ林宗恵と無責任シリーズ′テ澤憲吾=西村大志
02 東宝歌舞伎と東映歌舞伎──斜陽期の映画会社とスターの延命装置としての舞台公演=谷川建司
03 興行戦略としての「青春余命映画」──『愛と死をみつめて』と吉永小百合=久保豊
04 小津安二郎の興行戦略──『彼岸花』にみる作家性と企業性の折衝=伊藤弘了
column 映画『地獄門』と和田三造=高階絵里加

[U 映画産業の拠点としての京都]
05 京都と時代劇再考──東映剣会殺陣師を中心に=小川順子
06 戦後の日本映画における西陣機業と地域表象──『西陣の姉妹』を手掛かりに=須川まり
07 絵師と映画監督──時代考証にみる甲斐庄楠音と溝口健二の通底性=小川佐和子

[V 映画を取り巻くメディア環境]
08 『君の名は』の歌声──戦後日本の「メディアミックス」と聴覚文化=長門洋平
09 一九五〇年代の日本映画産業と海外市場へのアプローチ──国家支援を求めた動きとの関連で=北浦寛之
10 グラビアと啓蒙──戦後初期の『近代映画』が伝えたもの=花田史彦

[W 映画『祇園祭』を巡って]
11 映画『祇園祭』と京都=谷川建司
12 近現代史のなかの映画『祇園祭』──もう一つの明治百年=高木博志
13 中村錦之助の『祇園祭』前夜──五社協定下におけるスター俳優の躍進と抵抗=木村智哉
14 『祇園祭』論争に見る監督と脚本家の権限──一九六〇年代における著作権法改正の議論を背景に=板倉史明
15 制作社日誌からみる映画『祇園祭』──歴史学的分析の試み=京樂真帆子
column まぼろしの映画『祇園祭』パンフレット──挿絵画家・竹中英太郎の「復活」=菊地暁
column 映画『祇園祭』の復元と保存について=太田米男

映画の歴史、歴史の映画 研究の現在と今後の展望=木下千花


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[編者]

[編者紹介]
谷川建司(たにかわ・たけし)
早稲田大学政治経済学術院客員教授。映画史、大衆文化研究
著書に『アメリカ映画と占領政策』(京都大学学術出版会、2002)、『戦後「忠臣蔵」映画の全貌』(集英社クリエイティブ、2013)、『高麗屋三兄弟と映画』(雄山閣、2018)、Cultural Politics Around East Asian Cinema 1939-2018 (Co-Edited, Kyoto University Press, 2019)など

[執筆者紹介](掲載順)
西村大志(にしむら・ひろし)
広島大学大学院人間社会科学研究科准教授。文化社会学、歴史社会学
著書に『小学校で椅子に座ること』(国際日本文化研究センター、2005)、『夜食の文化誌』(編著、 青弓社、2010)、『大学的広島ガイド』(共編著、昭和堂、2012)、『映画は社会学する』(共編著、法律文化社、2016)など

久保豊(くぼ・ゆたか)
早稲田大学坪内博士記念演劇博物館助教。映画研究、クィア・スタディーズ
論文に“Still Grieving: Mobility and Absence in Post-3/11 Mourning Films” (Journal of Japanese and Korean Cinema 11[1])、「毒々しく咲く薔薇の政治性──1990年代の小林悟作品に見るHIV/エイズに対するスティグマの可視化と無縁化」(『演劇研究』43号)など

伊藤弘了(いとう・ひろのり)
関西大学文学部非常勤講師。映画研究=批評
論文に「タバコをくわえたスター女優──小津安二郎『浮草』における京マチ子の存在感」(『ユリイカ』2019年8月号)、「是枝映画における入浴の機能──『DISTANCE』(2001)における入浴場面の欠如とその意味」(『人間・環境学』25巻、2016)、「國民的アイドルの創生──AKB48にみるファシスト美学の今日的あらわれ」(『neoneo』6号、2015、映画評論大賞2015受賞)など

高階絵里加(たかしな・えりか)
京都大学人文科学研究所教授。近代美術史
著書に『異界の海』(改訂版、三好企画、2006)、『近代日本の歴史都市』(共著、思文閣出版、2013)、『講座?明治維新11 明治維新と宗教・文化』(共著、有志舎、2016)など

小川順子(おがわ・なおこ)
中部大学国際人間学研究科教授。日本文化研究、チャンバラ映画、大衆文化
著書に『「殺陣」という文化──チャンバラ時代劇映画を探る』(世界思想社、2007)、『戦後映画の産業空間──資本・娯楽・興行』(共著、森話社、2016)、『映画の身体論』(共著、ミネルヴァ書房、2011)、『映画史を読み直す』(共著、岩波書店、2010)など

須川まり(すがわ・まり)
追手門学院大学地域創造学部特任助教。映画学、観光社会学、地域表象研究
著書に『表象の京都──日本映画史における観光都市のイメージ』(春風社、2017)など

小川佐和子(おがわ・さわこ)
北海道大学大学院文学研究院准教授。映画史、音楽劇研究
著書に『映画の胎動──一九一〇年代の比較映画史』(人文書院、2016)、論文に「初期日本映画における外国映画のリメイク──『憲兵モエビウス』から『大尉の娘』へ」(北村匡平・志村三代子編『リメイク映画の創造力』水声社、2017)、論文に“The First World War and Japanese Cinema: From Actuality to Propaganda” (Jan Schmidt, Katja Schmidtpott, eds., The East Asian Dimension of the First World War, Campus Verlag, 2020)など

長門洋平(ながと・ようへい)
立教大学現代心理学部助教。映画研究、聴覚文化論
著書に『映画音響論──溝口健二映画を聴く』(みすず書房、2014)、『戦後映画の産業空間──資本・娯楽・興行』(共著、森話社、2016)、『川島雄三は二度生まれる』(共著、水声社、2018)、『〈ポスト3.11〉メディア言説再考』(共著、法政大学出版局、2019)など

北浦寛之(きたうら・ひろゆき)
開智国際大学国際教養学部講師。映画史、メディア研究
著書に『テレビ成長期の日本映画──メディア間交渉のなかのドラマ』(名古屋大学出版会、2018)、『戦後映画の産業空間──資本・娯楽・興行』(共著、森話社、2016)、『〈ポスト3.11〉メディア言説再考』(共著、法政大学出版局、2019)、『戦後日本文化再考』(共著、三人社、2019)など

花田史彦(はなだ・ふみひこ)
京都大学大学院教育学研究科博士後期課程。メディア史、日本近代史
著書に『生活綴方で編む「戦後史」──〈冷戦〉と〈越境〉の1950年代』(共著、岩波書店、2020)、論文に「社会を変える映画論の射程──映画評論家・岩崎昶の「大衆」観を中心に」(『マス・コミュニケーション研究』92号、2018)、「帝国日本を内破するメディア論──映画評論家・今村太平に関する一考察」(『人文学報』113号、2019)など

高木博志(たかぎ・ひろし)
京都大学人文科学研究所教授。日本近代史
著書に『近代天皇制の文化史的研究──天皇就任儀礼・年中行事・文化財』(校倉書房、1997)、『近代天皇制と古都』(岩波書店、2006)、『陵墓と文化財の近代』(山川出版社、2010)、Kyoto’s Renaissance: Ancient Capital for Modern Japan(Co-Edited, Renaissance Books, 2020)など

木村智哉(きむら・ともや)
玉川大学芸術学部ほか非常勤講師。映像産業史、アニメーション史
論文に「59年世代と演出中心主義──高畑勲と東映動画の〈長い60年代〉」(『ユリイカ』2018年7月臨時増刊号)、「アニメーション制作事業の不安定性とその対策──歴史研究の視点から」(永田大輔・松永伸太朗編『アニメの社会学──アニメ制作者とアニメファンたちの文化産業論』ナカニシヤ出版、2020刊行予定)など

板倉史明(いたくら・ふみあき)
神戸大学大学院国際文化学研究科准教授。映画学、日本映画史
著書に『映画と移民』(新曜社、2016)、『神戸と映画』(編著、神戸新聞総合出版センター、2019)、論文に“Set Design: Colour and Excess in Undercurrent (1956)” (Hideaki Fujiki, Alastair Phillips, eds., The Japanese Cinema Book, Bloomsbury, 2020; “Spontaneity in Acting in Japanese films of the 1930s: An Analysis of Our Neighbor Miss Yae (1934)” (Jeong-hee Lee-Kalisch, Annegret Bergmann, eds., Transcultural Interwinements in the East Asian Art and Culture, 1920s-1950s., VDG, 2018など

京樂真帆子(きょうらく・まほこ)
滋賀県立大学人間文化学部教授。日本史、ジェンダー史
著書に『平安京の都市社会史』(塙書房、2008)、『英雄になった母親戦士──ベトナム戦争と戦後顕彰』(有志舎、2014)、『牛車で行こう!──平安貴族と乗り物文化』(吉川弘文館、2017)など

菊地暁(きくち・あきら)
京都大学人文科学研究所助教。民俗学
著書に『柳田国男と民俗学の近代──奥能登のアエノコトの二十世紀』(吉川弘文館、2001)、『今和次郎「日本の民家」再訪』(共著、平凡社、2012)、『日本宗教史のキーワード──近代主義を超えて』(共編、慶應義塾大学出版会、2018)、『学校で地域を紡ぐ──『北白川こども風土記』から』(共編、小さ子社、2020)など

太田米男(おおた・よねお)
京都映画芸術文化研究所(おもちゃ映画ミュージアム)代表理事。日本映画の歴史、映画復元
著書に『別冊太陽?日本映画と京都』(編著、平凡社、1997)、『撮影監督?宮川一夫の世界』(共著、キネマ旬報社、2000)ほか。論文に『映画「無法松の一生」再生』(1-4、1994-1997、大阪芸術大学紀要『藝術』)、『非常時の少年たち──映画「僕らの弟」と「非常時涙の少年」』(1-2、1998-1999、同前)、『映画の復元──映画「何が彼女をそうさせたか」(1929年)に関して』(1-2、2000-2001、同前)ほか

木下千花(きのした・ちか)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授、日本映画史・映像理論
著書に『溝口健二論──映画の美学と政治学』(法政大学出版局、2016)、『リメイク映画の想像力』(共著、水声社、2017)、論文に“Something More Than a Seduction Story: Shiga Akiko’s Abortion Scandal and Late 1930s Japanese Film Culture,” (Feminist Media Histories 1 no. 1, January 2015)など