メディア・芸術
転形期のメディオロジー── 一九五〇年代日本の芸術とメディアの再編成
転形期のメディオロジー

本体4500円(+税)
鳥羽耕史・山本直樹[編]
A5判/352頁

978-4-86405-141-5
C1070
2019.9

メディア・芸術


1950年代、メディアの変貌がもたらしたもの
1950年代の日本で、テレビに代表されるニューメディアの出現が、印刷媒体中心であった既存のメディアをいかに変容・再定義していったのか。
本書では、主に文学・映像・美術のジャンルにおいて、異なるメディア間での相互交流、越境、再編成と、それらが作品や表現にもたらしたものを再検討し、現代の錯綜するメディア状況を歴史化する視点を提示する。

【目次】

はじめに=山本直樹

【T活字・出版メディア 】
ガリ版、連環画、幻灯から映画、テレビへ──一九五〇年代の草の根メディアとマスメディアについて=鳥羽耕史
大宅壮一の「熱い戦争」と「冷たい戦争」──海外ルポルタージュなどの活動をめぐって=阪本博志
『岩波写真文庫』の眼とヌーヴェル・ヴァーグ──名取洋之助の写真論=角田拓也
暗箱からの透視──埴谷雄高の《存在論的映画論》について=山本直樹

【U 映像・放送メディア】
思想の慣用語法としての映画──鶴見俊輔の自伝的映画批評=山ア順子/喜田智尊=訳
勅使河原宏の映画実験──再生という作法=友田義行
テレメンタリーという思考──NHK『日本の素顔』と一九五〇年代策=松山秀明
佐々木基一の『テレビ芸術』とテレビドラマ──アクチュアリティの追求=瀬崎圭二

【V表現・身体メディア】
民主的メディア圏における美の働き──千田梅二と戦後芸術運動=ジャスティン・ジェスティ/狩俣真奈=訳
田中敦子と《電気服》──女性の主体性の回路をめぐって=ナミコ・クニモト/友添太貴=訳
タブローの行方──一九五〇年代後半の美術の分岐点=鈴木勝雄
物質と芸術──戦後日本におけるアヴァンギャルドの理論と倫理=ケン・ヨシダ/喜田智尊=訳

おわりに=鳥羽耕史


本書をamazonで購入

【編著者紹介】
鳥羽耕史(とば こうじ)
早稲田大学文学学術院教授 専攻=日本近代文学、戦後文化運動
『運動体・安部公房』(一葉社、2007年)、『1950年代──「記録」の時代』(河出書房新社、2010年)

山本直樹(やまもと なおき)
カルフォルニア大学サンタバーバラ校助教授 専攻=映画理論・日本映画
Dialectics without Synthesis: Realism and Japanese Film Theory in a Global Frame, University of California Press, 2020, “Eye of the Machine: Itagaki Takao and Debates on New Realism in 1920s Japan,” Framework 56, no. 2 (Fall 2015).

【執筆者紹介】(掲載順)
阪本博志(さかもと ひろし)
宮崎公立大学人文学部准教授 専攻=社会学、メディア史、出版文化論
『『平凡』の時代──1950年代の大衆娯楽雑誌と若者たち』(昭和堂、2008年)、『高度成長期の〈女中〉サークル誌──希交会『あさつゆ』』(編集・解題、全10巻、金沢文圃閣、2017-2019年)

角田拓也(つのだ たくや)
コロンビア大学東アジア言語・文化学部助教授 専攻=日本映画、メディア文化、ドキュメンタリー映画等
「問いと指差し──神馬亥佐雄と『汚水カルテ』の映像試論」『戦後史の切断面──公害・若者たちの叛乱・大阪万博』(東京大学出版会、2018年)、“Hani Susumu, Nouvelle Vague and the Ontology of Cinema,” in A Companion to Japanese Cinema, WilleyBlackwell, 2020.

山ア順子(やまざき じゅんこ)
専攻=映画メディア学、東アジア言語文明学、日本映画
"Embedded Film, Embodied Reception: Tsurumi Shunsuke's Autobiographical Film Criticism,” The Journal of Japanese and Korean Cinema 10, no.2 (2018).

友田義行(ともだ よしゆき)
信州大学学術研究院教育学系・准教授 専攻=日本近代文学、映像学
『戦後前衛映画と文学──安部公房×勅使河原宏』(人文書院、2012年)、『映画と文学 交響する想像力』(共著、森話社、2016年)

松山秀明(まつやま ひであき)
関西大学社会学部准教授 専攻=テレビ文化論
「日本のテレビ研究史・再考──これからのアーカイブ研究に向けて」(『放送研究と調査』第67巻第2号、2017年)、『新放送論』(共著、学文社、2018年)

瀬崎圭二(せざき けいじ)
同志社大学文学部教授 専攻=日本近現代文学・文化
「和田勉の演出技法──芸術的テレビドラマの探求─」(『人文学』第199号、2017年3月)、「三好十郎作「獣の行方」を読む/視る」(『人文学』第202号、2018年11月)

ジャスティン・ジェスティ(Justin Jesty)
ワシントン大学アジア言語文学学科准教授 専攻=戦後日本文化史(アートと社会運動)
Art and Engagement in Early Postwar Japan, Cornell University Press, 2018,“Japan’s Social Turn, vols. 1-2,”special issue, FIELD: A Journal of Socially Engaged Art Criticism 7-8 (Spring and Fall 2017).

ナミコ・クニモト(Namiko Kunimoto)
オハイオ州立大学准教授 専攻=美術史
The Stakes of Exposure: Anxious Bodies in Postwar Japanese Art, University of Minnesota Press, 2017, “Tactics and Strategies: Chen Qiulin and the Production of Urban Space,”Art Journal 78, no.2 (Summer 2019).

鈴木勝雄(すずき かつお)
東京国立近代美術館主任研究員 専攻=日本近代美術史
これまで担当した展覧会に、「実験場1950s」展(東京国立近代美術館、2012年)、「アジアにめざめたら:アートが変わる、世界が変わる 1960-1990年代(Awakenings: Art in Society in Asia 1960s-1990s)」(東京国立近代美術館、韓国国立現代美術館、ナショナル・ギャラリー・シンガポール、2018-2019年)

ケン・ヨシダ(Ken Yoshida)
カルフォルニア大学マーセッド校グローバルアーツ部助教授 専攻=美術史・視覚文化学
“Deactivating the Future: Sawaragi Noi’s Polemical Recoil from Contemporary Art,” Review of Japanese Culture and Society 26 (December 2014/2016),“Interstitial Movements in the Works of Hanada Kiyoteru: A Preliminary Study,” positions: asia critique 22, no.4 (2014).


【翻訳者紹介】
喜田 智尊(きだ とものり)
早稲田大学大学院文学研究科日本語日本文学コース博士後期課程 専攻=日本近代文学
「田山花袋「少女病」のまなざし──本能・美観・轢死」(『花袋研究学会々誌』、第33号、2016年6月、花袋研究学会)、「人形のいる家──田山花袋「八年前」における「平和な家庭」とその破壊の意義」(学会発表、第59回花袋研究学会定期大会 、2019年6月15日、於東洋大学白山校舎)

狩俣真奈(かりまた まな)
早稲田大学大学院文学研究科国際日本学コース博士後期課程 専攻=日本近現代文学
「坂口安吾『紫大納言』の改稿をめぐって──近代小説から説話、ファルスへ」(『早稲田大学大学院文学研究科紀要』60輯3冊、2015年)、「坂口安吾の戦後作品の肉体に見る〈主体のゆらぎ〉──「白痴」「魔の退屈」「戦争と一人の女」を中心に」(『戦後日本を読みかえる第4巻 ジェンダーと生政治』臨川書店、2019年)

友添太貴(ともぞえ たいき)
早稲田大学文化構想学部助手 専攻=日本近代文学
「横光利一と平林初之輔──「科学」の視点から」(『横光利一研究』2018年3月)、「死の曙を越えて──横光利一「花園の思想」と同時代フランス映画」(『日本文学』、2018年12月)