映画・映像
ユーモア文学と日本映画  近代の愉快と諷刺
ユーモア文学と日本映画

岩本憲児[著]
四六判/296頁
本体2800円(+税)
ISBN978-4-86405-138-5
 C0074
2019.6

日本映画


ユーモア文学、滑稽文学、諷刺文学、喜劇映画、コメディ……。笑いを誘う文学や映画にはさまざまなジャンルや呼び方がある。
本書では、夏目漱石、佐々木邦、獅子文六、源氏鶏太、井伏鱒二の小説と映画化作品をとりあげ、その魅力や特徴をさぐる。明治・大正・昭和の笑い、ユーモア、諷刺、そしてその時代の社会観や世相はどのようなものか。

【目次】

【序幕 ユーモアと滑稽】
〈ユーモア〉という外来語/ユーモアと滑稽/日本映画とユーモア文学

【T 猫は笑い、人は怒る[夏目漱石]】
漱石のユーモア解釈/漱石とマーク・トウェイン/漱石と幻燈と活動写真/小説から映画へ/小説と映画──『坊つちやん』/戦前の映画版『吾輩ハ猫デアル』 /「漱石のトーキー見物」とは/戦後も数多い映画『坊っちゃん』/ 漱石文学のユーモア

【Uユーモアは雅量なり[佐々木邦]】
〈ユーモア文学〉とは何か/『いたづら小僧日記』/諧謔からユーモアへ/評論家たちは無視/好い奴ほどよく笑う──ユーモア小説と佐々木邦/手作りの回覧雑誌『ユーモア屑箱』/小市民の笑いと小津安二郎/映画版『いたずら小僧』/いたづら小僧たち、社会へ──『人生初年兵』 /『ユーモアクラブ』創刊 / ユーモアと緊張──戦時下から戦後へ

【Vてんやわんやの男と女と日本と[獅子文六]】
獅子文六、二つの名前/初の映画化作品『悦ちゃん』/戦時下の作品──『信子』とその前後/戦後の獅子文六/『てんやわんや』の気弱な主人公/映画初出演、淡島千景の溌剌さ/映画も好評/求心運動と四国独立/男と女、それぞれの自由──『自由学校』/競作、映画版『自由学校』/『青春怪談』の「怪談」とは/再びの競作、映画版『青春怪談』/獅子文六映画の評価/映画化特急

【W明日も青空[源氏鶏太]】
サラリーマン映画と小市民映画/サラリーマン作家の登場/サラリーマンの浮気心──小説「浮気の旅」と映画『浮気旅行』/源氏サラリーマン小説の出発点──「随行さん」と「ホープさん」/サラリーマン応援歌──映画『ラッキーさん』/会社は大きな家族──『三等重役』の庶民感覚/映画『三等重役』/シリーズ化されたサラリーマン映画/原作を超えた映画『青空娘』

【X庶民のおかしさと哀しみ[井伏鱒二]】
井伏文学のユーモア、ナンセンス、ペーソス/井伏鱒二と映画の接点/映画『多甚古村』と『簪』/バスの旅、ローカル線──『おこまさん』と『秀子の車掌さん』/町医者と戦争の傷痕──映画版『本日休診』/汽車の旅、ローカル線──『集金旅行』/旅の集合と離散──『駅前旅館』/都会の共同体幻想──『貸間あり/映画版『貸間あり』の評価/ユーモア小説と映画にさす戦争の影

【Y日本映画のユーモアと諷刺】
喜劇映画とユーモア映画──斎藤寅次郎、伊丹万作、小津安二郎/日常生活の喜劇/人情喜劇・都会と田園──木下恵介から山田洋次へ/新しい諷刺映画──市川崑『プーサン』の寂しき笑い/市川崑『億万長者』と『満員電車』/サラリーマンの超現実──古澤憲吾『ニッポン無責任時代』

【終幕ユーモアと笑い、その力】


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【著者紹介】
岩本憲児(いわもと けんじ)
1943年、熊本県八代市生まれ
早稲田大学名誉教授 映画史・映像論専攻
著書に『幻燈の世紀──映画前夜の視覚文化史』(森話社、2002)、『サイレントからトーキーへ──日本映画形成期の人と文化』(同、2007)、『「時代映画」の誕生──講談・小説・剣劇から時代劇へ』(吉川弘文館、2016)ほか
編著に『村山知義──劇的尖端』(森話社、2012)、『日本映画の海外進出──文化戦略の歴史』(同、2015)ほか
共編に『映画理論集成』全3巻(フィルムアート社、1982、1988-99)、『日本戦前映画論集』(ゆまに書房、2018)ほか