日本近代文学
革命芸術プロレタリア文化運動
革命芸術プロレタリア文化運動

本体4800円(+税)
中川成美・村田裕和[編]
A5判/376頁

978-4-86405-136-1
C1095
2019.2

日本近代文学・文化


沸騰する大衆のエネルギー
〈プロレタリア文化運動〉は、1920年代初めから30年代前半にかけておこなわれた芸術運動・大衆啓蒙運動・地方文化運動である。
本書は、近年発掘されたガリ版刷りのビラ、チラシ、チケットなど運動の最前線で使われた多様な資料を駆使しながら、文学・運動理論・演劇・美術・宗教・メディア・ジェンダーの側面から検討し、近代資本主義の矛盾と対峙した人々の足跡を明らかにする。モダニズム研究の新局面。

【目次】

【序論】プロレタリア文化運動研究のために=中川成美

【T 資料をたずねて】
「小樽資料」「浦西資料」との出会い=伊藤純
小樽文学館と小林多喜二と池田壽夫旧蔵書=玉川薫
大原資料の特徴=立本紘之

【U 文化運動の諸相】
[総論]日本プロレタリア文芸聯盟の設立と〈プロレタリア文化運動〉=村田裕和
[文学@]プロレタリア文化運動における組織の問題=内藤由直
[文学A]地方のプロレタリア文化運動──関西を中心に=和田崇
[文学B]文戦派の文化運動=鳥木圭太
[運動理論]「プロレタリア文化運動」の理論化の意義と諸問題=立本紘之
[演劇@]小山内薫と「築地小劇場」=伊藤純
[演劇A]プロットと移動劇場=正木喜勝
[演劇B]新協劇団と『月刊 新協劇団』──左翼と国策のあいだ=鴨川都美
[美術]地方のプロレタリア美術──移動展と地方支部=足立元
[宗教]プロレタリア文化運動における宗教の位置づけ=池田啓悟
[メディア]戦旗社支局における謄写版刷りニュースの発行──指導方針と読者の間で=武田悠希
[ジェンダー]プロレタリア文化運動における「婦人」の位置付け──コップの婦人政策を中心として=泉谷瞬

【V 附録】
参考文献目録=池田敬悟(編)
団体名および略称一覧
左翼演劇公演一覧表=村田裕和(編)
日本プロレタリア文化運動組織変遷図[1921─1934]=村田裕和(編)

あとがき=村田裕和


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【編者紹介】
中川成美(なかがわ しげみ)
立命館大学・特別任用教授・名誉教授。日本近現代文学・文化、比較文学。
『語りかける記憶──文学とジェンダー・スタディーズ』(小沢書店、1999年)、『モダニティの想像力──文学と視覚性』(新曜社、2009年)、『戦争をよむ──70冊の小説案内』(岩波新書、2017年)

村田裕和(むらた ひろかず)
北海道教育大学旭川校・准教授。日本近代文学。
『近代思想社と大正期ナショナリズムの時代』(双文社出版、2011年)、「アナキズム詩の場所??小野十三郎『半分開いた窓』における〈不穏な郊外〉」(『文芸研究』第183集、2017年3月)

【執筆者紹介】(掲載順)
伊藤 純(いとう じゅん)
八田元夫演出研究所演出部(1955-59年在籍)。プロレタリア文化運動研究者。現在、貴司山治net資料館を管理・運営している。
「小林多喜二の死と貴司山治──貴司を出所とする「党生活者校正刷」(小樽文学館所蔵)をめぐって」(『水脈』第9号、2010年3月)、「プロレタリア文化運動と"コミンテルン三二年テーゼ"──「昭和戦前期プロレタリア文化運動資料研究会」の資料集成作業の中から」(『フェンスレス』第4号、2016年9月)

玉川 薫(たまがわ かおる)
市立小樽文学館館長。日本近代文学。
企画展「伊藤整の『日本文壇史』展」(1998年)、『昭和歌謡全集 北海道編』(1999年)他の展示構成・図録編集

立本紘之(たてもと ひろゆき)
法政大学大原社会問題研究所・兼任研究員。日本近現代史。
「一九二〇年代日本左翼運動における「知」の転換──ドイツからロシアへ」(『東京大学日本史学研究室紀要』第17号、2013年3月)、「戦前期日本における「防共」概念の社会的意義と後景思潮」(榎一江編『戦時期の労働と生活』法政大学出版局、2018年)

内藤由直(ないとう よしただ)
立命館大学・准教授。日本近代文学。
『国民文学のストラテジー』(双文社出版、2014年)、『戦後史再考──「歴史の裂け目」をとらえる』(共著、平凡社、2014年)

和田 崇(わだ たかし)
三重大学・准教授。日本近代文学。
『演歌の明治ン大正テキヤ──フレーズ名人・添田唖蝉坊作品と社会』(共著、社会評論社、2016年)、「日独プロレタリア文学の往来──雑誌"Die Links-kurve"を中心に」(『立命館文学』第652号、2017年8月)

鳥木圭太(とりき けいた)
立命館大学・助教。日本近現代文学。
『リアリズムと身体──プロレタリア文学運動におけるイデオロギー』(風間書房、2013年)、「佐多稲子『歯車』に見る「政治と文学」──ハウスキーパーという再生産労働」(『草茫々通信』第12号、2018年6月)

正木喜勝(まさき よしかつ)
学芸員。近代日本演劇史。
「村山知義研究──劇場の中の革命」(博士論文、2010年)、「共有領域としてのプロレタリア演劇──前進座の誕生とその背景」(神山彰編『交差する歌舞伎と新劇』森話社、2016年)

鴨川都美(かもがわ さとみ)
久留米工業高等専門学校・准教授。日本近代演劇・文学。
「村山知義『暴力団記』の歴史的意義──搾取の構造とプロレタリアートの形象」(『社会文学』第39号、2014年2月)、「原爆戯曲を覆う抑制──「島」/「ゼロの記録」の受容から」(『日本文学』第66巻第11号、2017年11月)

足立 元(あだち げん)
二松学舎大学・専任講師。美術史。
『前衛の遺伝子──アナキズムから戦後美術へ』(ブリュッケ、2012年)、「前衛のちひろ 1947-1952」(『生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。』東京ステーションギャラリー、2018年)

池田啓悟(いけだ けいご)
立命館大学等非常勤講師。日本近代文学。
『宮本百合子における女性労働と政治』(風間書房、2015年)、「慈善と信念をめぐって──宮本百合子「貧しき人々の群」論」(『立命館文学』第652号、2017年8月)

武田悠希(たけだ ゆき)
武庫川女子大学等非常勤講師。日本近代文学。
「押川春浪『英雄小説武?の日本』の小説像──素材・構造・執筆動機を鍵として」(『日本近代文学』第91集、2014年11月)、「「日露戦争 写真画報」における押川春浪──家庭を対象とした雑誌編集の実践」(『近代文献調査研究論集』国文学研究資料館研究成果報告書、2016年3月)

泉谷 瞬(いずたに しゅん)
大谷大学・任期制講師。日本近現代文学。
「暴力からの脱出/他者への接近──津村記久子「地下鉄の叙事詩」論」(『日本文学』第63巻第9号、2014年9月)、「出向者のクィア・リーディング──伊藤計劃『虐殺器官』と津村記久子「十二月の窓辺」」(『昭和文学研究』第77集、2018年9月)