日本文学[古代]
栄花物語 歴史からの奪還
栄花物語 歴史からの奪還

高橋 亨・辻 和良[編]
A5判/272頁
本体6200円(+税)
ISBN978-4-86405-133-0
C1095
2018.10

平安朝文学


『栄花物語』を嚆矢とする歴史物語は、これまで文学作品と認識されつつも、「歴史書」であるともみなされてきた。
しかし、『栄花物語』が〈物語〉であることの意味を真に問うため、「歴史書」という認識をいったん傍らに置いて、『栄花物語』を徹底的に〈物語〉として読み、その論理や表現の構造を明らかにする。

【目次】

[目次] 物語と歴史の境界あるいは侵犯=高橋 亨
エクリチュールとしての『栄花物語』──『狭衣物語』との近似性に着目して=桜井宏徳
藤原登子──〈物語化〉された尚侍=高橋照美
源倫子──その摂関家の正妻らしからぬ行動=吉海直人
永平親王の語りをめぐって──「十二ばかりに」に着目して=土居奈生子
『栄花物語』の立后と「一の人」──歴史認識の形成=村口進介
『栄花物語』「みはてぬゆめ」巻の構造──不敬事件へと収斂する物語=星山 健
二人のかぐや姫──『栄花物語』巻第六「かかやく藤壺」の彰子と定子=久保堅一
『栄花物語・初花』の〈語り手女房〉──語り換えの方法=山下太郎
『栄花物語』、固有の〈歴史〉語り──小一条院東宮退位をめぐる延子・顕光の恨み=辻 和良
『栄花物語』進命婦考──続編の叙述の方法をめぐって=廣田 收
『狭衣物語』と『栄花物語』についての一考察──賀茂斎院神事の記録=神田龍身

あとがき=高橋 亨・辻 和良


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【編者紹介】
高橋 亨(たかはし とおる)
名古屋大学名誉教授 専攻=物語文学
『源氏物語の詩学』(名古屋大学出版会、2007 年)、『〈紫式部〉と王朝文芸の表現史』(編著、森話社、2012 年)

辻 和良(つじ かずよし)
名古屋女子大学文学部教授 専攻= 平安朝文学
『源氏物語の王権─光源氏と〈源氏幻想〉─』(新典社、2011 年)、「『栄花物語』、「心情的表現」に基づく主題論的考察」(『古代文学研究第二次』第26 号、2017 年10 月)

【執筆者紹介】(掲載順)
桜井宏徳(さくらい ひろのり)
成蹊大学非常勤講師 専攻= 平安文学(中古文学)・歴史物語
『物語文学としての大鏡』(新典社、2009 年)、「宇治十帖の中務宮─今上帝の皇子たちの任官をめぐって─」(『中古文学』第93 号、2014 年5 月)

高橋照美(たかはし てるみ)
茨木市立川端康成文学館館長、立命館大学非常勤講師 専攻= 中古文学(歴史物語)
「『大鏡』の兼家像をめぐって」(『論究日本文学』第73 号、2000 年12 月)、「『大鏡』の最終記事」(『立命館文学』第624 号、2012 年1 月)

吉海直人(よしかい なおと)
同志社女子大学表象文化学部教授 専攻=平安文学(特に源氏物語と百人一首)
『『源氏物語』「後朝の別れ」を読む』(笠間書院、2016 年)、『百人一首の正体』(角川ソフィア文庫、2016 年)

土居奈生子(どい なおこ)
成蹊大学全学教育講師 専攻=平安文学
「〈大宮〉考─古記録・史料に見る藤原穏子─」(『名古屋大学国語国文学』第108 号、2015 年11 月)、「〈大宮〉考─古記録・史料に見る昌子内親王─」(『名古屋大学国語国文学』第110 号、2017 年11 月)

村口進介(むらぐち しんすけ)
三重大学人文学部特任准教授 専攻=中古文学
「源氏物語の外戚政治と〈右大臣〉〈大将〉」(『日本文藝研究』第59 巻1 号、2007 年6 月)、「「ただ人にて朝廷の御後見をする」光源氏」(『国語と国文学』第95 巻4 号、2018 年4 月)

星山 健(ほしやま けん)
関西学院大学文学部教授 専攻=王朝物語
『王朝物語史論─引用の『源氏物語』─』(笠間書院、2008 年)、「『栄花物語』「さまざまのよろこび」巻論─帝後宮の物語から兼家一家の物語へ─」(『中古文学』第101 号、2018 年5 月)

久保堅一(くぼ けんいち)
鳥取大学地域学部准教授 専攻=平安朝文学
「『竹取物語』と仏伝」(『中古文学』第77 号、2006 年6 月)、「龍のくびの珠≠求める話─『竹取物語』求婚難題譚と戒律─」(『文学・語学』第221 号、2017 年12 月)

山下太郎(やました たろう)
大阪府立東住吉高等学校教諭 専攻=王朝物語・日記、表現論、文章論
「古今和歌集詞書の「よめる」と「よみける」─ケリ叙述からリ叙述へ─」(『日本言語文化研究』第21 号、2017 年1 月)、「伊勢物語第九段の「蜘蛛手」と「鴫」─〈待つ女〉の映像を喚起する─」(『古代文学研究第二次』第26 号、2017 年10 月)

廣田 收(ひろた おさむ)
同志社大学文学部教授 専攻=古代物語・中世説話文学
『文学史としての源氏物語』(武蔵野書院、2014 年)、『古代物語としての源氏物語』(武蔵野書院、2018 年)

神田龍身(かんだ たつみ)
学習院大学文学部教授 専攻=中古・中世文学
『物語文学、その解体─『源氏物語』「宇治十帖」以降─』(有精堂出版、1992 年)、『偽装の言説─平安朝のエクリチュール─』(森話社、1999 年)