芸能・演劇
日本語オペラの誕生
日本語オペラの誕生

大西由紀[著]
A5判/544頁
本体4800円(+税)
ISBN978-4-86405-131-6
C1074
2018-7

近代日本演劇


《第51回(2019年度)日本演劇学会河竹賞奨励賞》受賞
《第24回日本比較文学会賞(2019年)》受賞
ヴァーグナーへの憧れに突き動かされて、日本でオペラの試演が始まったのは20世紀初頭のこと。歌舞伎や能を見慣れた当時の日本人は、オペラをどのように理解/誤解し、自分たちの表現を見つけていったのか。
オペラへの野心が感じられる鴎外・逍遙の戯曲から、帝劇歌劇部を経て、お伽歌劇や浅草オペラに至るまで――。試行錯誤の中から誕生した和洋折衷の「日本語オペラ」の実態を、台本の精読をとおして明らかにする。

【目次】

はじめに──問題の設定

[第一部 物語る声は誰のものか──東西の戯曲形式の狭間で]
   第一章 オペラが目指されなかった時代──演劇改良論から新劇運動まで
  第一節 オペラ劇場への憧れと、オペラ待望論の欠如──演劇改良論
  第二節 独白表現と「チョボ」の呪縛──『ハムレット』をめぐって
  
 第二章 二つの浦島劇──森鴎外『玉篋両浦嶼』と坪内逍遙『新曲浦島』
  第一節 ヴァーグナー・ブームとオペラ待望論
  第二節 「白を主とする劇」──『玉篋両浦嶼』
  第三節 「振事」を基礎とする「新国劇」──坪内逍遙『新曲浦島』

 第三章 オペラと歌舞伎と「叙事唱歌」の距離──北村季晴『露営の夢』
  第一節 音楽劇『露営の夢』の成立まで
  第二節 歌舞伎座における上演の実態
  第三節 歌唱者の振り分け──義太夫節の歌舞伎化との対照において

[第二部 音楽劇は何を物語るべきか、何を物語れるのか]
 第四章 日本人による初期の歌劇上演
  第一節 東京音楽学校『オルフォイス』
  第二節 楽苑会の創作および翻訳歌劇上演
  第三節 前期文藝協会の上演した逍遙の音楽劇作品
  第四節 山田耕作『誓の星』

 第五章 帝国劇場の試行錯誤
  第一節 帝国劇場の誕生──新時代の理想と伝統の継承
  第二節 第二節 女優と歌手、バレエとオペラ──帝国劇場歌劇部の発足と『胡蝶の舞』
  第三節 日本的題材の採用の是非──『熊野』
  第四節 劇評界の示した二つの方向──『釈迦』
  第五節 「常磐津のオペラ」という反動──『江口の君』
  第六節 その他の歌劇関連の演目

 第六章 帝劇歌劇部の達成したもの
  第一節 ローシー指揮下の洋楽音楽劇の展開
  第二節 小林愛雄の翻訳喜歌劇台本──『ボッカチオ』を例に
  第三節 帝劇洋劇部の解散以降

[第三部 歌とセリフは、それぞれ何を物語るのか]
 第七章 実験の場としての「お伽歌劇」
  第一節 歌とセリフのすみ分け──北村季晴『ドンブラコ』
  第二節 音楽の挿入を目的とする劇──本居長世『うかれ達磨』
  第三節 『ドンブラコ』『うかれ達磨』から見えてくるもの

 第八章 レコードになったお伽歌劇
  第一節 佐々紅華の仕事
  第二節 語り物の系譜に連なる音楽劇──『ウントコ爺さん』
  第三節 日本的な節回しの呪縛──『ウサ??兎』
  第四節 浅草での仕事ぶりを予感させる作品──『目なし達磨』
  第五節 口語散文の自在な歌唱──『茶目子の一日』
  第六節 「文句集」における歌とセリフの位置付け──「むすびに」に代えて

 第九章 浅草オペラ──観客の支持した新しい音楽劇
  第一節 浅草オペラとはどのようなものであったか──先行研究をもとに
  第二節 帝劇時代の翻訳台本からの逸脱──再び『ボッカチオ』を例に
  第三節 替え歌オペラ──伊庭孝『女軍出征』、佐々紅華『カフェーの夜』
  第四節 「本格」オペラ上演への憧れ──小松耕輔訳『ファウスト』『椿姫』

 むすびに
 参考文献一覧
 略年譜
 あとがき
 主要外国作品原題・邦題対照表
 主要索引
 
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【著者紹介】
大西由紀(おおにし・ゆき)
東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程修了。博士(学術)。専門は比較文学・翻訳論。現在、東京大学大学院総合文化研究科助教。
主な共著書に、『キーワードで読む オペラ/音楽劇 研究ハンドブック』(アルテスパブリッシング、平成29年)、『浅草オペラ 舞台芸術と娯楽の近代』(森話社、平成29年)、『貴志康一と音楽の近代──ベルリン・フィルを指揮した日本人』(青弓社、平成23年)。