芸能・演劇
歌舞伎と革命ロシア  一九二八年左団次一座訪ソ公演と日露演劇交流
歌舞伎と革命ロシア

永田靖・上田洋子・内田健介[編]
A5判/392頁
本体4800円(+税)
ISBN978-4-86405-120-0
C1074
2017-10

演劇・歌舞伎


1928年(昭和3)、二代目市川左団次一座はなぜソ連で歌舞伎初の海外公演を行ったのか。また、それを見たソ連の人々の反応はどのようなものだったのか。
本書は、公演実現に至るまでの日ソ双方の事情や背景をさぐるとともに、公演後にソ連から贈られた新聞・雑誌の記事や批評のスクラップブックを翻訳することによって、歌舞伎という演劇を初めて見たソ連側の関心や反応を明らかにした労作。

【目次】

序 一九二八年左団次一座のソヴィエト公演について=永田靖

[T 一九二八年歌舞伎ソ連公演を読み解く]
1 一九二八年のソ連が見た歌舞伎=上田洋子
2 日ソ国交回復前後の文化交流とその政治的背景=内田健介
3 異国趣味の正当化──一九二八年訪ソ歌舞伎公演をめぐって=北村有紀子、ダニー・サヴェリ/翻訳=堀切克洋
4 レニングラードの文脈における一九二八年の歌舞伎公演=マリヤ・マリコワ/監訳=上田洋子・翻訳=内田健介

[U 文脈としての日露演劇交流史]
5 日露戦争劇『敵国降伏』──歌舞伎の戦争劇と史劇の交点=日置貴之
6 アルカイズムは未来主義を刺激する──エイゼンシテインと歌舞伎=鴻英良
7 メイエルホリド劇場と日露交流──メイエルホリド、ガウズネル、ガーリン=伊藤愉
8 一九世紀末ロシアにおける歌舞伎受容──バレエ『ミカドの娘』を例に=斎藤慶子

[V 一九二八年歌舞伎ソ連公演新聞・雑誌評]
新聞・雑誌評/執筆者/掲載媒体/新聞・雑誌評リスト
 
本書をamazonで購入

【編者紹介】
永田 靖(ながた・やすし)
大阪大学大学院文学研究科教授 専攻=演劇学、近代演劇史
The Local meets the Global in Performance, Cambridge SP, 2010(共著)、Adapting Chekhov: The Text and its Mutations, Routledge, 2015(同)

上田洋子(うえだ・ようこ)
株式会社ゲンロン副代表、早稲田大学・中央大学非常勤講師 専攻=ロシア文学
シギズムンド・クルジジャノフスキー『瞳孔の中──クルジジャノフスキイ作品集』(秋草俊一郎と共訳、松籟社、2012 年)、『メイエルホリドの演劇と生涯──没後70 年・復権55 年』(編著、展示図録、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館、2019 年)

内田健介(うちだ・けんすけ)
千葉大学特任研究員 専攻=ロシア演劇
『ロシア革命と亡命思想家』(共著、御子柴道夫編、成文社、2006 年)、「チェーホフの『かもめ』におけるトレープレフとニーナの運命」(『演劇研究』第35 号、2012 年3 月)

【執筆者・訳者】(掲載順)
北村有紀子(きたむら・ゆきこ)
専攻=英文学、比較文学
「アニータ・ブルックナーとマルセル・プルースト──ブルックナー『ロジエ通りでの出来事』をめぐって」(『比較文学年誌』第39 号、早稲田大学比較文学研究室、2003 年3 月、47-67頁)、 “Egawa Tatsuya’s Manga, e Tale of the Russo-Japanese War: e Weather is Fine but the Waves are High,” World War Zero: e Russo-Japanese War in Global Perspective, David Wolff, ed., Leiden; Boston: Brill, 2006, pp.417-431.

ダニー・サヴェリ(Dany Savelli)
トゥールーズ・ジャン・ジョレス大学准教授 専攻=ロシア文学、比較文学
А. Андреев, Д. Савелли (ред.) Рерих: Мифы и факты?〔神話と事実のあいだのレーリッヒ一家〕.
СПб.: Нестр-История, 2011. D. Samson & D. Savelli (eds),?La Siberie comme paradis?〔天国としてのシベリア〕, Paris, Petra, 2017 年刊行予定.

堀切克洋(ほりきり・かつひろ)
千葉大学・慶應義塾大学・専修大学非常勤講師 専攻= 20 世紀フランス演劇、表象文化論
「象形文字としての身体──マラルメ、ニジンスキー、アルトーにおける運動イメージ概念をめぐって」(『表象』第7 号、2013 年、207-229 頁)、ルック・ファン・デン・ドリス『ヤン・ファーブルの世界』(共訳、論創社、2010 年)

マリヤ・マリコワ(Мария Маликова)
ロシア科学アカデミーロシア文学研究所(プーシキン館)上級研究員 専攻=文学 Халтуроведение: советский псевдопереводной роман периода НЭПа〔手抜き研究? ネップ期のソ連における偽翻訳小説〕// Новое литературное обозрение〔 『新文学展望』〕. 2010. 103.
С . 109?139?”Время”: история ленинградского кооперативного издательства (1922-1934)〔 『時代』 レニングラードの協同組合出版局の歴史(1922-1934 年)〕//??Конецинституций культурыдвадцатых годов в Ленинграде.?По архивным материалам. Сб. статей.〔 『1920 年代レニングラードにおける文化機関の終焉 アーカイブ資料による論集』〕/ Сост. М. Маликовой. М.: Новое литературное обозрение, 2014. С.129 331.

日置貴之(ひおき・たかゆき)
白百合女子大学文学部准教授 専攻=歌舞伎研究
『変貌する時代のなかの歌舞伎──幕末・明治期歌舞伎史』(笠間書院、2016 年)、「河竹黙阿弥作「水天宮利生深川」における新聞の機能」(『演劇学論集』第62 号、2016 年5 月)

鴻 英良(おおとり・ひでなが)
演劇批評家 専攻=ロシア芸術思想
『二十世紀劇場──歴史としての芸術と世界』(朝日新聞社、1998 年)、『エイゼンシュテイン解読』(共著、岩本憲児編、フィルムアート社、1986 年)

伊藤 愉(いとう・まさる)
日本学術振興会特別研究員 専攻=ロシア演劇史
『佐野碩 人と仕事── 1905-1966』(共著、菅孝行編、藤原書店、2015 年)、K・B・イートン『メイエルホリドとブレヒトの演劇』(谷川道子と共編訳、玉川大学出版部、2016 年)

斎藤慶子(さいとう・けいこ)
北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター学術研究員 専攻=日露バレエ交流史「チャイコフスキー記念東京バレエ学校『白鳥の湖』──『白鳥の湖』ソ連上演史のコンテクストにおける位置づけ」(『舞踊學』第38 号、2015 年、20-32 頁)、「革命とバレエ──古典舞台芸術の危機と再生」(『ロシア革命とソ連の世紀』浅岡善治、池田嘉郎、宇山智彦、中嶋毅、松井康浩、松戸清裕(編)、第4 巻、岩波書店、2017 年刊行予定)

生熊源一(いくま・げんいち)
北海道大学大学院文学研究科博士後期課程、日本学術振興会特別研究員(DC1)
専攻=ロシア現代美術
「コンセプチュアリズムとアクショニズムの隠されたつながり──新たな芸術環境における年長世代と若年世代の芸術家たちの関係」(ロシア語、『スラヴィアーナ』第7 号、2015年11 月)、「息の転換──「集団行為」における対物関係」(『ロシア語ロシア文学研究』第49 号、2017 年刊行予定)