日本近代文学
アンソロジー・プロレタリア文学C 事件   闇の奥へ
プロレタリア文学C 事件

本体3000円(+税)
楜沢健[編]
四六判/376頁

978-4-86405-080-7
C0393
2017.8

日本近代文学


「十五円五十銭と言ってみろ」
関東大震災の混乱のさなかに飛び交った朝鮮人暴動のデマ。濁音の発音が苦手な朝鮮人を特定するために警察や自警団が発した質問である。
この言葉から震災を描いた壺井繁治「十五円五十銭」をはじめ、足尾鉱毒事件、済南事件、更には探偵小説風にプロレタリア文学的な事件を描いた作品まで、隠れた名作を収める。

【『アンソロジー・プロレタリア文学』について】
1920 年代〜 30 年代に流行し、その後顧みられることの少なかったプロレタリア文学作品を、 テーマ別に全7 巻にまとめ、年2 巻程度のペースで刊行。
プロレタリア文学ならではのラインナップで短篇〜中篇小説、匿名の投稿小説、「壁小説」などを各巻10 本程度収録し、加えて川柳・ 短歌・俳句・詩なども収める。巻末には編者による解説を掲載。
【目次】

雨の降る品川駅=中野重治

[T]
転機=伊藤野枝
砂糖より甘い煙草=小川未明
川柳=鶴彬ほか

[U]
十五円五十銭──震災追想記=壺井繁治
奇蹟=江馬 修
骸骨の舞跳=秋田雨雀
間島パルチザンの歌=槇村 浩

[V]
不逞鮮人=中西伊之助
新聞配達夫=楊 逵
平地蕃人=伊藤永之介
済南=黒島伝治
伏字=坂井徳三

[W]
江戸川乱歩=平林初之輔
労働者ジョウ・オ・ブラインの死=前田河広一郎
六万円拐帯事件=橋本英吉・窪川いね子・土師清二
    *
[解説]伏字の闇の奥へ=楜沢 健

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【編者紹介】
楜沢 健(くるみさわ・けん)
1966年東京生まれ。文芸評論家、早稲田大学他非常勤講師。
早稲田大学第一文学部卒業。同大学院文学研究科博士課程単位取得退学。
プロレタリア文学を研究の中心テーマ、座標軸のひとつに据え、ユニークな文芸評論を展開。
『だからプロレタリア文学──名文・名場面で「いま」を照らしだす17の傑作』(勉誠出版、2010年)、『だから、鶴彬──抵抗する17文字』(春陽堂書店、2011年)、『川柳は乱調にあり──嗤う17音字』(春陽堂、2014年)、『葉山嘉樹・真実を語る文学』(共著、花乱社、2012年)、『里村欣三の眼差し』(里村欣三顕彰会編、吉備人出版、2013年)、『多喜二の文学、世界へ──2012年小林多喜二国際シンポジウム報告集』(荻野富士夫編、小樽商科大学出版会、2013年)、『原発川柳句集──五七五に込めた時代の記録』(レイバーネット日本川柳班編、2013年)など。