芸能・演劇
歌舞伎メモランダム  同時代の演劇批評
歌舞伎メモランダム

大矢芳弘[著]
四六判/496頁
本体3200円(+税)
ISBN4-86405-115-6
C0074
2017-04

歌舞伎


歌舞伎座の建て替えとともに、歌舞伎役者の世代交代が進んだ激動の時代──。
舞台上で脚光を浴びる彼らの活躍を通して、時に癒され、時に励まされる同時代の演劇の魅力と感動を記録した劇評集。
團十郎・仁左衛門・玉三郎の『三人吉三』(平成16年)から吉右衛門の『伊賀越道中双六』(平成26年)までの記録とエッセイを収録。
【目次】
[第一部 平成十六年から平成二十年まで]
平成の名優「三幅対」(『三人吉三巴白浪』)/仁左衛門のまなざし(『義経千本桜』「いがみの権太」)/「昨日の敵は今日の味方」(『義経千本桜』「碇知盛」)/威勢よい飾り海老(『助六由縁江戸桜』)/タイトルロールの運命(『桜姫東文章』)/「出雲の阿国」という伝説(石川耕士=作『OKUNI』)/敵討ちという不条理(『伊賀越道中双六』)/試行錯誤の「将軍殺し」(『噂音菊柳澤騒動』)/獅童の初座長公演(林不忘=原作『丹下左膳』)/世話物に挑む幸四郎(『盲長屋梅加賀鳶』)/匂い立つ「時分の花」(『鳥辺山心中』)/人間国宝の芸のパッチワーク(『新版歌祭文』「野崎村」)/「新しい勘三郎」の表情(『一條大蔵譚』)/次郎左衛門のコンプレックス(『籠釣瓶花街酔醒』)/伝統と創造と(野田秀樹=作『野田版研辰の討たれ』)/近松の時代物(『信州川中島合戦』「輝虎配膳」)/立女方と若女方(『加賀見山旧錦絵』)/元気溌剌とした富十郎(『うかれ坊主』)/光秀の三日天下(『絵本太功記』)/平成の「坂田藤十郎」(『曾根崎心中』)/初春を寿ぐ曾我狂言(『曾我梅菊念力弦』)/平成の「菊吉」共演(『人情噺小判一両』) /清貧ということ(『近頃河原の達引』)/「猿之助歌舞伎」の継承(『當世流小栗判官』)/青春グラフィティ(三谷幸喜=作『決闘!高田馬場』)/團十郎の舞台復帰(『外郎売』)/「三越歌舞伎」への期待(『女殺油地獄』)/「玉三郎」という幻想(泉鏡花=作『海神別荘』、同『天守物語』)/大立廻り二種(『慶安太平記』「丸橋忠弥」『南総里見八犬伝』)/吉右衛門の「秀山祭」(『双蝶々曲輪日記』「引窓」、『菅原伝授手習鑑』「寺子屋」)/「勘平役者」の仁と柄(『仮名手本忠臣蔵』「五段目」、「六段目」)/芸の遺伝子(『勧進帳』、『弁天娘女男白浪』)/「愛」と「欲」(『神霊矢口渡』「頓兵衛住家」)/「雪月花」の大石内蔵助(『元禄忠臣蔵』)/蜷川幸雄の演出力(シェイクスピア=原作『NINAGAWA十二夜』)/勘三郎の政岡(『裏表先代萩』)/男と女の「軍記」(『一谷嫩軍記』「熊谷陣屋」、『壇浦兜軍記』「阿古屋」)/「俊寛」三態(『平家女護島』「俊寛」)/お家騒動の背景(『傾城反魂香』)/「語り」と「騙り」(『摂州合邦辻』)/玉三郎の存在感(有吉佐和子=作『ふるあめりかに袖はぬらさじ』)/ 平成歌舞伎のバリエーション(花組芝居『KANADEHON忠臣蔵』)/座頭役者の貫禄(『東海道四谷怪談』、『一本刀土俵入』)/「親殺し」という主題(『夏祭浪花鑑』)/小説のレトリック(泉鏡花=作『高野聖』)/濃姫の「呪言」(野田秀樹=作『野田版愛陀姫』)/共鳴する二十一世紀歌舞伎組(横内謙介=作『新・水滸伝』)/源氏再興の白旗(『源平布引滝』)/菊五郎の世話物二題(『新皿屋舗月雨暈』「魚屋宗五郎」、『雪夕暮入谷畦道』)/「一期一会」の覚悟(『大老』)/本蔵一家の肖像(『仮名手本忠臣蔵』)/「乱歩歌舞伎」という奇態(江戸川乱歩=原作『江戸宵闇妖鉤爪』)/ひたむきな菊之助の政岡(『伽羅先代萩』)/清濁併せ呑む菊五郎(『遠山桜天保日記』)

随想〈其の一〉
「歌舞伎座」についての断章

[第二部 平成二十一年から平成二十二年まで]
「歌舞伎座さよなら公演」開幕(『寿曾我対面』)/生命のエネルギー(『象引』)/海老蔵の八面六臂(『義経千本桜』「いがみの権太」)/仁左衛門の口跡(『元禄忠臣蔵』「御浜御殿綱豊卿」)/民衆のレジスタンス(『新皿屋舗月雨暈』)/仁左衛門と玉三郎の共演(『伽羅先代萩』)/成田屋の「睨み」(『暫』、『恋湊博多諷』「毛剃」)/碁石の黒と白(『祇園祭礼信仰記』「金閣寺」)/富十郎の一世一代(『勧進帳』、『連獅子』)/ロンドンからの凱旋(シェイクスピア=原作『NINAGAWA十二夜』)/「コクーン歌舞伎」の変奏曲(長塚圭史=作『桜姫』)/七之助の透明感(『桜姫』)/三津五郎と勘三郎の舞踊二題(『六歌仙容彩』、『船弁慶』)/絵心に満ちた娯楽作品(『石川五右衛門』)/「暗闇」の名場面(『浮世柄比翼稲妻』「鈴ヶ森」)/現代社会の「油地獄」(倉持裕=作『ネジと紙幣』)/『平家物語』幻視行(『義経千本桜』)/「人間豹」の孤独(江戸川乱歩=原作『京乱噂鉤爪』)/歌舞伎座見納めの『忠臣蔵』(『仮名手本忠臣蔵』)/歌舞伎が描く青年像(『盟三五大切』、『三人吉三巴白浪』)/ 将軍頼家の悲劇(『頼朝の死』、『修禅寺物語』)/團十郎の弁慶の闘魂(『勧進帳』)/天下泰平の象徴(『旭輝黄金鯱』)/「猿之助歌舞伎」の継承(『慙紅葉汗顔見勢』)/座頭役者をめざす橋之助(『金門五山桐』)/「歌舞伎座さよなら公演」のフィナーレ(『助六由縁江戸桜』)/直助権兵衛のエピソード(『四谷怪談忠臣蔵』)/井上ひさしへの追悼(井上ひさし=作『化粧』)/前進座歌舞伎の前途(『処女翫浮名横櫛』)/気軽に楽しめる「赤坂大歌舞伎」(『人情噺文七元結』)/「亀治郎の会」の挑戦(『義経千本桜』「狐忠信」、『上州土産百両首』)/青果史劇二題(『天保遊侠録』、『将軍江戸を去る』)/新橋演舞場の顔見世(『天衣紛上野初花』)/獅子と牡丹の取り合わせ(『国性爺合戦』)/大星由良助の「無念の涙」(『仮名手本忠臣蔵』)/玉手御前に挑む菊之助(『摂州合邦辻』)

随想〈其の二〉
「歌舞伎座さよなら公演」を振り返る

[第三部 平成二十三年から平成二十六年まで)]
團十郎の剛直球(『源平布引滝』「実盛物語」)/サブカルチャーとしての歌舞伎(『四天王御江戸鏑』)/才気溢れる亀治郎(『黒手組曲輪達引』)/地獄と極楽の分かれ目(『絵本合法衢』)/東北の被災地を思う(『義経千本桜』「狐忠信」)/コクーン歌舞伎の世代交代(『盟三五大切』)/恵みの雨(井上ひさし=作『雨』)/澤瀉屋一門の再結集(『當世流小栗判官』)/馬琴の反骨精神(『開幕驚奇復讐譚』)/明るく健やかな作風(山本むつみ=作『明治おばけ暦』)/少女から大人へ(『京鹿子娘道成寺』)/近松のヒューマニズム(『曾根崎心中』)/「待ってました」(『お祭り』)/いぶし銀の声音(『元禄忠臣蔵』「御浜御殿綱豊卿」、「大石最後の一日」)/虚無感を漂わす幸四郎(『三人吉三巴白浪』)/忠度の歌と敦盛の笛(『一谷嫩軍記』)/勘太郎から勘九郎へ(『曾我綉侠御所染』「御所五郎蔵」)/若手花形の『忠臣蔵』(『仮名手本忠臣蔵』「三段目」、「四段目」)/「お家騒動」のシチュエーション(『小笠原諸礼忠孝』)/勘三郎の新境地(『梅雨小袖昔八丈』「髪結新三」)/ファンタジーとしての魅力(宮藤官九郎=作『天日坊』)/ 「襲名」という覚悟(『黒塚』)/役者の実力が試される鑑賞教室(『毛抜』)/詩情豊かな名場面(『塩原多助一代記』)/タテ社会の人間関係(『四千両小判梅葉』)/刑場と遊廓(『浮世柄比翼稲妻』)/花組芝居二十五周年(花組芝居『菅原伝授手習鑑』)/孤高の生き方(『鬼一法眼三略巻』)/平和なればこその芝居見物(『夢市男達競』)/?葺落しの「弁天小僧」(『弁天娘女男白浪』)/吉右衛門のお家芸(『梶原平三誉石切』「石切梶原」)/明治座の花形歌舞伎(『与話情浮名横櫛』)/僧形の悪党(『沖津浪闇不知火』)/幸四郎と染五郎の親子共演(『一谷嫩軍記』)/愛之助の上方歌舞伎(『夏祭浪花鑑』)/旅情ということ(『伊賀越道中双六』)/古典と現代社会の交錯(木ノ下歌舞伎『東海道四谷怪談』)/はかなく散った若者たち(『仮名手本忠臣蔵』「五段目」、「六段目」)/権力悪への憤怒(『いろは仮名四十七訓』「弥作の鎌腹」)/当たる午年の「馬切り」(『三千両初春駒曳』)/新しい猿之助のスタートダッシュ(前川知大=作『空ヲ刻ム者』)/「失われた街」(川村毅=作『神なき国の騎士』)/次世代の「團菊祭」(『春興鏡獅子』)/ 水彩画の筆遣い(『慙紅葉汗顔見勢』)/「三人吉三」のリアリティ(船岩祐太=作『3crock』)/「陶酔」と「覚醒」(『三人吉三』)/中車が熱演する「新歌舞伎」(『修禅寺物語』)/梅玉と魁春の夫婦役(『傾城反魂香』「吃又」)/松也の自主公演「挑む」(『双蝶々曲輪日記』「引窓」)/吉右衛門の威風(『絵本太功記』「尼ヶ崎閑居」)/勘三郎二代の追善(『菅原伝授手習鑑』「寺子屋」)/自縄自縛からの解放(『双蝶々曲輪日記』)/目を見張る「猿之助奮闘公演」(『金幣猿島郡』)/満を持した染五郎の弁慶(『勧進帳』)/顔見世狂言の娯楽味(『四天王楓江戸粧』)/新派劇の可能性(川口松太郎=作『鶴八鶴次郎』)/名場面「岡崎」の復活(『伊賀越道中双六』)

随想〈其の三〉
燃え尽きた役者魂――十二代目市川團十郎と十八代目中村勘三郎
歌舞伎座新装開場を祝う
柿葺落しの宴のあと

〈別表一〉「歌舞伎座さよなら公演」演目・主な出演者
〈別表二〉「歌舞伎座新開場?葺落」演目・主な出演者

あとがき 索引
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【編者紹介】
大矢芳弘(おおや・よしひろ)
1964年、東京に生まれる。1987年、学習院大学法学部を卒業。
演劇評論家。
著書に、『歌舞伎リアルタイム 同時代の演劇批評』(森話社、2004年4月)。共著に、田口章子編著『歌舞伎ギャラリー50 登場人物&見どころ図解』(学習研究社、2008年5月)。
その他、諏訪春雄編著『芸能名言辞典』(東京書籍、1995年9月)、国際浮世絵学会編『浮世絵大事典』(東京堂出版、2008年6月)、藤田洋監修『歌舞伎大事典』(柏書房、2012年7月)に執筆。