芸術 | |
墨痕 書芸術におけるモダニズムの胎動 | |
栗本高行[著] |
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比田井南谷を嚆矢とする前衛書の探究。伝統を背負いながらモダニズムの波と対峙し、言語とイメージ、モノクロームと色彩の間で苦闘した書家たちの戦後があった。 上田桑鳩、宇野雪村、大澤雅休・竹胎、千代倉桜舟、青木香流、森田子龍、井上有一。 抽象表現主義、アンフォルメル、「具体」といった同時代の前衛美術との連絡や、かな交じり書への挑戦を通して「現代書」の理念を希求した表現の系譜を辿る。 【目次】 序 【T「書」における近代化の問題と戦後の大規模展時代の到来】 1 日本の書にとっての近代 2 「現代書」前史[1]───「古典」との遭遇による東洋的近代の消化 3 「現代書」前史[2]───「古典」に対する姿勢の柔軟化と西洋近代美術の影 4 西洋文化との対峙と戦後書壇の形成 5 「現代書」の概観 【U「書」の現代的展開と新たな伝統の形成】 1 「大衆」の視線の意識化───金子?亭と近代詩文書 2 海外からの視線の意識化───手島右卿と少字数書 【V 前衛書、その発生と展開】 1 書と前衛 2 比田井南谷と「心線」の発見 3 南谷書の躍進 4 未知なる記号における造形精神の交叉 5 大衆性との乖離 6 臨書研究からの出発 7 書の構造の根底にあるもの 8 構図へのまなざし 9 空間の増殖とその反作用 10 最後の実験 11 前衛書を受け継ぐ 12 臨書への懐疑から真の創作へ 13 呼応する「線の思想」 14 時代の尖端に躍り出た美意識 【W 書壇からの脱出とその帰結───「墨人会」と森田子龍・井上有一】 1 「墨人会」結成まで 2 『墨美』の編集と美術との摩擦 3 いのちの動き 4 東洋の磁力圏での創作 5 文字の破壊から創造へ 6 宇宙的空間の体現としての書 7 「言語」への挑戦───ソシュール言語学の見地から@ 8 意図への問いかけ───井上有一と美術 【補説 書と美術の接点とは】 1 第二のジャポニスム? 2 美術批評家の冷遇 3 アメリカ絵画に差す「書」の影 4 ヨーロッパ大陸との具体的接触 5 日本美術の住人たちの視点 6 トランスメディアの視線───前衛主義の再考察 【X 漢字かな交じり書の可能性】 1 現代書の動向とかな 2 壮大なる書作の背景 3 前衛表現への踏み出し 4 「超大字かな」への飽くなき挑戦 5 一心同体の書業 6 大地への憧れ 7 古典消化のための紆余曲折 8 美術への「開かれ」 9 戦争と書 10 「光線」と研ぎ澄まされた白 11 第二の「師」 12 読めない書という到達点 13 大空襲を書にする 14 書における推敲の本質───ソシュール言語学の見地からA 15 儀式としての臨書 16 コンテ書をめぐるさまざまな見解 17 現代書へ向かう先兵として 結 参考文献一覧 図版出典一覧 あとがき 事項索引 人名索引 |
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【著者紹介】 栗本高行(くりもと・たかゆき) 1984年、岐阜県生まれ。 2009年、慶應義塾大学文学部独文学専攻卒業。2014年、多摩美術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(芸術)。 専門は近現代を中心とする書の歴史および美術史。 2010年に第2回「墨」評論賞準大賞、2011年に第1回東野芳明記念優秀修了論文賞、2014年に第10回「涙骨賞」奨励賞を受賞。雑誌・展覧会カタログへの美術評論の寄稿も多い。 2014年より多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。 |