芸術 | |
絵画に焦がれた写真 日本写真史におけるピクトリアリズムの成立 | |
打林 俊[著] |
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花王芸術・科学財団《第9回美術に関する研究奨励賞》受賞研究 《日本写真芸術学会学術賞》授賞 幕末に新たな「技術」として渡来した写真は、明治・大正期を通じ欧米での展開に共鳴しながら「芸術」としてのありようを模索する。 絵画的な画面構成によって、美術としての写真表現に挑んだピクトリアリズムの動向を、近代日本美術や展覧会制度との関係から読み解き、モダニズム写真へと至る「写真芸術」の誕生を描きだす。 巻末には、1893年5月に東京で開催された、〈外国写真展覧会〉の出品作品総目録を収録。 【目次】 序──先行研究と問題の所在 [Ⅰ]言説から見る日本のピクトリアリズム 1 欧米におけるピクトリアル写真の呼称──“Photographie artistique”をめぐって 2 写真史編纂上のピクトリアリズムの成立──ニューホールの『写真の歴史』を中心に 3 日本における「二つの黄金時代」の受容 4 言説史から見る日本のピクトリアリズムの成立過程──「芸術写真」の成立 5 ピクトリアリズムと「芸術写真」の対応と拡大 6 写真のモダニズム期における「芸術写真」の語──ピクトリアリズム以後の変容をめぐって [Ⅱ]ピクトリアリズムの受容──〈外国写真展覧会〉の開催とその影響 1 開催時の時代背景 2 〈外国写真展覧会〉開催までの経緯 3 〈外国写真展覧会〉の実態──昭憲皇太后の行啓と、表現の受容 4 明治二〇年代における写真と絵画の関係──光の表現をめぐって 5 開催後の影響──大日本写真品評会と第四回内国勧業博覧会 [Ⅲ]日本におけるピクトリアリズムの成立へ 1 日本写真史における小川一真の位置をめぐって 2 小川一真の帝室技芸員任命と「東京美術学校写真科設置上申書」 3 日本のピクトリアリズム成立過程における小川一真の写真表現──P・H・エマーソンの受容と光の表現 4 明治三〇年代の写真表現──近像型構図をめぐる日欧視覚文化の交流 5 ピクトリアリズムの成立──明治四〇年代 6 「写真ルネサンス」の展開──大正期の動向 [Ⅳ]ピクトリアリズムにおける「アカデミズム」 1 欧米における官・公設美術展、博覧会での写真の扱い──フランス第二帝政期におけるサロンと写真を中心に 2 日本写壇とアカデミズム──文部省美術展覧会写真部門設置をめぐって 3 写真の「サロン」の開設──表現と制度の問題の表出 4 〈日本写真美術展覧会〉と〈日本写真大サロン〉にみる審査制度と表現傾向の整合性 5 ピクトリアリズムの表現と制度の関係をめぐって──多様な表現の融合とモダニズム写真の台頭 結論「芸術写真」──ピクトリアリズムとモダニズムの間で 年表 主要参考文献 あとがき 〈外国写真展覧会〉目録 索引 |
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【著者紹介】 打林 俊(うちばやし しゅん) 1984年東京生まれ。 2007年日本大学芸術学部写真学科卒業、2009年日本大学大学院芸術学研究科博士前期課程映像芸術専攻修了、パリ第1パンテオン=ソルボンヌ大学、国立芸術研究所招待研究生(2010~2011年)を経て、2013年日本大学大学院芸術学研究科博士後期課程芸術専攻修了。 博士(芸術学)。現在、日本大学芸術学部非常勤講師。 専門は写真史、日欧視覚文化交流史。 2009年日本写真芸術学会奨励賞、2015年花王芸術・科学財団第9回美術に関する研究奨励賞受賞。 著書に『レンズが撮らえた幕末明治の富士山』(共著、山川出版社、2013)、『富士フイルム・フォトコレクション展──日本写真史を飾った写真家の「私の一枚」』(共著、フジフイルム、2014)など。 日本写真芸術学会、美術史学会、日仏美術学会会員。 |